今回の芭蕉展の為に、いろいろと資料を探したり、本を読みました。その中で、この「悪党芭蕉」という本には群を抜いて引き込まれました。芭蕉から俳句だけを切り取って理解しようとするのはやはり無理があり、芭蕉という人物が、その時代にどの様に生きていたのかを知らなければ、「ん~、なんだかよくわからんなぁ、」というのが正直なところ。今の時代に絵を描きながら生活している僕としても一番知りたいと思うのは、「どうやって生活してたん? 何を見てたん? いや、何が見えてたん?」という思いでした。著者の嵐山光三郎氏の豊富な資料と、句に対する勇気?ある解説にもドキドキしました。芭蕉という人が、いつの時代に生きた人であれ、俳句を詠みながら、何を見ていたのかという一番重要な部分に、「英雄」芭蕉のオーラを一旦剥ぎ取って冷静に迫ってみようという試みであり、オーラを剥ぎ取った芭蕉を悪党に見立てる仕組みを借りて、本当のところを覗いてみたいという執念を感じます。この本を読んでいると、蕉門の中の様々な思惑の中で開かれる句会の末席に、僕もこそっと時代を超えて参加している気分になれます。

悪党芭蕉 (新潮文庫)

悪党芭蕉 (新潮文庫)

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