つるはし

僕が作業場を借りている鶴橋駅前商店街の話。普段の僕は、お日様の出ている間は梅田で専門学校の授業。これが週の五日。日が暮れかけると、大阪千日前通りの、谷町九丁目から上本町、鶴橋と自転車で東西にチャリチャリ移動しながら、ゴソゴソしている。上本町には、版画のプレス機が置いてあり、他にメダルの仕事などもする。ここ鶴橋商店街、最西端にある「クンスト・クラフト・クルップ」(日本語だと、美芸集団かしら、)は、僕の作業場ではなく、先輩福田新之助氏の仕事場で、僕は間借り人である。大きな絵はここで描かせてもらっている。作業場については以前も少し書いたので、今日は、その「クンスト」がある市場のことを書いてみる。日が暮れて、夜の六時も過ぎれば、市場は、写真の様にひっそりしています。千日前に接する北側の通りだけは、パチンコに赤ちょうちん、カラオケ、吉牛などなど深夜まで賑やかですが、路地一筋入ると全ての看板は眠りの中。それもそのはず、午後の7時は、市場にとっては夜明け前。それから5時間ほどして近鉄鶴橋駅から最終電車が出た頃に、市場の目覚めがやってくる。最も早いのが、魚の問屋さん。三重のナンバーをはじめ、大阪以西の漁場を抱える各地から、トラックがやってくる。このころ僕はかなりの疲労を抱えながら、コンビニまで炭酸水を買いにいく。疲れて表情の消えた僕とは反対に、魚屋の兄さん達は朝の笑顔。各地の漁場から、きっと神経を使って魚を運んで来た運転手さんは、荷台に海のついているトラックに登り、網で魚を取り出していく。この真夜中の暗闇に、いや、朝なのか、網の中の輝く鯛やハマチの、ぴちぴちと動くのが異様に際立つ。僕は、呆気にとられて立ち止まって見てしまうのだけれど、絵具の付いた短パンとTシャツを着た無表情なオヤジの存在も、働く若人達からは際立つようで、不安げな眼差しを避けてコンビニへ。問屋には日によって、人が入れる様なスチロールの棺桶が降ろされていて、「マグロなんだな〜きっと。ちょっと見たいなぁ。」とか、思うけれど、箱に触った瞬間に絶対怒られそうなので、炭酸水をぶらぶら下げて通り過ぎる。本当の朝がやってきた五時頃、魚がトラックから市場全体に撒かれると、人も増え一気に活気が出てくる。鰹節、うなぎを焼く匂い、働く人の為にコーヒーと朝ご飯。うどんもあれば、お寿司にサンドイッチ。パン屋のパンも焼き上がっていて、お店の電気はついていないが、入って行けば売ってくれる。なぜか履物屋も開店する。どれも安くておいしそうなのだけど、これから寝ないといけない僕は自転車でトボトボ千日前を登って帰っていく。二枚目の写真は、僕が帰る時にいつも歌っている奴ら。

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