2009-11-04

展覧会の構成は三部からなっています。先ず「芭蕉の生涯」として1階展示室に伊賀時代の俳書をはじめ、晩年に至るまで年代順に芭蕉筆の資料が展示されています。二つめは、「芭蕉に啓発された作家たち」として2階右手の展示室に、蕪村、小川芋銭、小杉放庵など、芭蕉に影響を受けた人物の書画資料などが展示されており、三つ目、2階左の美術館の展示室には「芭蕉と現代の作家たち」として、我々今回の出品者が、柿衞文庫所蔵の芭蕉関連資料より一人一点づつを選び、それに対して新たに制作した作品と各自が選んだ資料共に展示されています。  昨年の暮れ、この、出品者が資料の中から自分の一点を決めるという準備作業の為に柿衞で用意していただいたシチュエーションはとても印象に残っています。芭蕉の懐紙や短冊など全ての資料は、直に見られる様、ガラスケースも何も無い状態で講義室に並べられていました。恥ずかしながらハンカチすら持っていなかった僕は、息がかからないようにマフラーを口元に当てて、全ての資料を間近で見ながら、「むぅ、間違いなく、ちょうどココ、ここに座って書いたのね、芭蕉翁は。」などと至極当たり前のことに興奮していました。懐紙の前に立ち、書かれた文字を指で追って書くまねをしたりしてました。その僕のことを大久保先生が見られていたようで、後に食事をした際に「そういうことじゃないだろう。。」と、笑われましたが、文字の形ではなく、僕は芭蕉がどのくらいの時間この紙の前に座っていたのだろうと考えていました。けど、変なことしてるなぁと、そこにおられた方はみんな思っていたのでしょう。。そうやって指でなぞってみた懐紙が、制作の対象に選んだ 芭蕉筆「庭興即事」でした。

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