藤木 周 Shu Fujiki (美術評論)
現代芸術論
芸術批評誌『リア』編集委員
2003年12月

2003年12月23日~2004年1月4日
[Rejional Standard 小西祐司×立嶋滋樹] 展 紹介文

立嶋滋樹のペインティングの場合、大きく広げられた浮遊感のある色面を背景に、刻印されたような線が置かれることで、画面が構築される。印象は植物的な時空の広がりであり、モネ的な懐の深さを感じさせる。ところが立嶋の関心は、コップのモチーフに遡る「遠近」にあるのではと考えたときに、立嶋の絵づくりに沈潜する野心に、ペインティングを視る眼が触発されていく。オールオーヴァーに浮遊感のある色面が描かれている。これを垂直に立てられたキャンバスに壁のように視ることになるが、この色面は本来、水平面として作られているのではないか。これに気付くとき、視ることはめまいのような感覚を覚える。 画面に重ねられる3つのレベルは、遠景・中景・近景のように見立てられ、オーソドックスに向こうへと奥行をもたらすのではなく、浮き上がろうとするようで、視る者はどこかの瞬間に転倒するようなめまいを感じる。画面に刻み込まれたような線の在り方は、この転倒を防ぐ錘のようで、留められた線の仕事もまた興味深い。これは絵画を知悉した者の仕事と言っては作家を祭り上げてしまうが、立嶋がペインティングに何かを掴んでいることは確かである。

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